chapter4:異なるアプローチ

ここでは配置のセオリー破り、特殊命令について解説します。

配置のセオリー破り

◆キーに目立たない音を置く

アタックが遅い音で浮遊感を演じたり、
弱い音たたかせることで逆にその音に集中させることができます。

◆音階無視

叩きやすくするために階段を崩したり、演出優先で対称配置にしたり。
音階無視の例はDatabaseを参照。

スクラッチっぽくない音をスクラッチに
ハデに体を動かさせることが目的のスクラッチ。
譜面にアクション性を持たせることができます。シンバルスクラッチなんかもこれに該当します。

◆同じ音を違うレーンに

縦連打を叩きやすくするために交互にしたり、散らしたりする場合。
乱打や階段を押しやすくするために使うこともあります。

◆違う音を同じレーンに

前の音との何かしらの関連性をアピールしたり。
例:フィルターかかった音を同じレーンに置く場合等。

◆5鍵盤で隣接

不協和音感、叩きにくさのアピール。
例:"Strowberry music"

◆わざと叩きにくくする

うまく使えばゲーム性向上、あるいは音を目立たせる効果。

◆無音オブジェを叩かせる

無音を叩かせることに意味があると思われる場合。
詳しくは後述

◆マーキング

超みじかいロングノートで、オブジェの特別性を演出。
詳しくは第4章(準備中)にて。

◆実際の速度を無視したBPM変化

曲のテンションを視覚的にも表現したり、ゲーム性を譜面に与えたり。
やりすぎは禁物です。
詳しくは後述

◆小節長変更

短くして加速感、伸ばしてブレイク感を譜面に付加したり。
例:"人間の盾""Ether dive"
詳しくは後述

◆低TOTAL値

わざとTOTAL値を低く設定し、プレイに緊張感を持たせる方法。
譜面や曲調に合った場合だと効果的に働く。
例:"Hide own draw back"

BPM変化と小節長

通称「ソフラン」こと譜面スピードが大きく変化する技法について解説します。
語源はbeatmania IIDX 2nd styleの「SOFT LANDING ON THE BODY」ですが、
ここでは細かい変化も含めて扱っていきます。

◆ソフランの必然性

技術的にはさほど難しいことではありません。…が、何の変哲もない所でいきなりスピードアップされても意味不明で戸惑うばかりです。配置同様、組み込むにはそれなりの説得力が求められます。

とはいえ、ソフランに適した場所を一概に決めることは出来ません。鍵となるのは曲調です。曲を聞き、
「ここは落ち着いて弾きたい」とか「最後は疾走感を感じたい」とか頭の中で緩急を描けたら準備OKです。

◆BMSEでのソフラン

仮にBPMが100の曲があるとします。最初の1小節を半分の速度でソフランさせたい場合、
まず#001に「BPM50」を打ち込み、次に右の「拍子」メニューから「#001を2/4」にします。
結果として落下速度は1/2、かかる距離も1/2と相殺され、曲に影響なく見た目を変えることが出来ました。
この概念さえ守ればどんな細かい変化も可能です。

◆BMSEで編集しやすい倍率

前項の仕組みから計算が楽な値があります。それは元BPMに対して
「*0,5」「*0.75」「*1.25」「*1.5」「*2.0」…といった辺りです。
演出する上でも、およそこのくらいで間に合う場合がほとんどです。

◆BMSCと基礎理念

BMSCでは小節長はかなり融通が効きます。

 

【(変更後のBPM ÷ 基本BPM) × 変更前の小節長 = 変更後の小節長】

 

この公式を利用すれば、BPMや倍率を自由に指定することができます。
例えば「BPM120:小節長1.5」の曲を「BPM255」にしたい場合、
求める小説長は「120:1.5=255:X」から

 

X=(255÷120)×1.5=3.1875

 

BPMに255を指定し、小節長を3.1875と打ち込めばOKです。
BMSC型ソフランはGDAC同様、小節長を変えても配置間隔は変わりません。
よってソフランの比率のみを自由に操ることが出来ます。


【補足】
この項ではBMSC用として取り上げましたが、基礎原理は変わりません。
実際はエディターや拍子・BPMを問わず、すべての譜面でこの公式が使えます。
例えばBMSEにて…

1.配置し終えたファイルを開く。
2.ソフランを始める小節に任意のBPMを置き、保存。
3.メモ帳などでファイルを開く。
4.公式から「変更後の小節長」を求め、テキストに追記。

…といったプロセスで応用も可能です。具体的には、
「ZZ定義のロングノート変拍子譜面で、拡張BPMを使用した、BMSC型ソフラン」
なども作れます。


――【サンプル】――
▼パペットマペット / tata / kusofumen lovers(差分)
原曲は「パペットマン / tata」
約半小節ごとにBPMが加算・減産される特殊事例です。
これをBMSEで開くと「拍子」の項が凄いことに…。

◆小節長とサイレント

音が何も流れていない時など、落ち着きたいのに振ってくる小節線が邪魔な場合、
小節数を一つに減らし、それを元の長さだけ伸ばすとさり気なくスマートになります。


――【サンプル】――
zipその斯くも美しき紅に (Light7-LN/7keys-LN/14keys-LN) / 天音 obj:Johnny as 74(差分)
#30にて調整。


zipはじまりのうた [7KEY/HYPER-LN] / plastic feat.咲野 柚 obj:Johnny(差分)
BMSEで設定できる分子の限界「64」を用いた差分。退廃的なLN部分では小節線はほとんど流れず、
対する中盤・終盤ではオブジェの密度が高まる中、追い立てるような演出を目指しました。

◆ソフラン利用の注意点

ソフランは時に見た目を大きく変える演出方法です。
それだけに緩急の大きさ・頻度はそのままプレーヤーへの負担になります。
したがって、ピアノ独奏の溜めを厳密に再現したような譜面より、
1・2回の変化に絞った方が安心できる場合もあります。サジ加減に注意を。


――【サンプル】――
zipThe cosmic wheels / Absolute Ego Creator / obj:Johnny as 74(差分)
#66以降の昂揚~収束に対して小節長で波を付けました。


zipfaucet (LN) / LU obj:Johnny as 74(差分)
ソフランからストップシーケンスに繋がる演出を目指したものの、評価は微妙なものでしたw


zipdrop (dive to noise) -LN- / valentia obj:Johnny(差分)
ラストのノイズにひと工夫。でも本当の肝はその後一小節の静寂にあります。


zipUltimate Truth -final Collapse-(7keys-LN) / sun3 obj:Johnny as 74(差分)
全体を通して微妙に変化する譜面。中盤の最高速をきっかけに後半が盛り上がる波を目指しました。

無音オブジェの利用

◆セオリーに反する旨

まずはじめに、無音オブジェは基本的にはありえません。叩くと音が出ることが大前提だからです。
しかし、無音を叩かせることに意味がある譜面は存在しますし、
同時発音のwavが分解できないなど、差分としての表現の限界に行き詰った時に使われる場合もあります。

◆無音オブジェを叩かせることに意味のある場合

主にBGM含め音が全て消える場所に配置される例があります。
オブジェを叩くとあたかも音が消えるような感じを表現できます。
この技法は曲に大きく依存されます。気軽に使っても意図が理解されないことが多いです。十分ご注意を。
成功している例はNo.337 / ATM(画像),小さなトリカゴ / sieの2例ほどしかありません。

◆同時押しへの利用

同時発音のwavがバラせなくて仕方なく無音で妥協する場合。
例えばシェルター・キッズ / ミドリ(下画像)。あくまで妥協です。ばらせる場合はちゃんとばらしましょう。
また、いくらどうしようもないからといっても無音を使ってることに突っ込まれても文句は言えません。

◆BGMにあわせて無音を叩く

BGMが一本wavの場合など、あたかも叩かせているような配置で全ての音を無音で配置する場合。
配置案のやりとりには使えるかと思いますが、基本的は使用しないほうがよいでしょう。

不可視オブジェの利用

◆不可視オブジェとは

BMSEでCtrlを押しながら置くと配置されるオブジェ。
プレイ上では何も振ってこないが、空打ちでその音を鳴らすことが出来る。
詳しくはDatabase参照。

◆無音との併用でミスタッチ防止

不可視オブジェに無音オブジェを置いて空打ちで音を鳴らさせない方法。
緊張感を持たせたい場合、ブレイクなどに使用すると効果的。

◆押すタイミングが狂うと別の音が鳴る

ミスタッチを逆に利用する方法。通常オブジェを不可視オブジェで挟んでみたり、
BPM変化やストップシーケンスと併用する例も。
特に重要なオブジェ付近に置くと効果的。画像の場合、スクラッチが16分ずれるとkick.wavを再生。
えふ、おー、おー、えんっ えふおーおーえんっ ズン

◆アレンジプレイ@空白レーン

何も振ってこないレーンに不可視オブジェを定義する場合。
スクラッチの無い場所でスクラッチを回すと何か音が鳴ったり。

◆アレンジプレイ@空白ゾーン

完全に不可視オブジェのみのゾーンを譜面に設ける場合。
プレイヤーは好きに叩いてアレンジを楽しむことが出来る。
アレンジしやすい音を選択して不可視オブジェを定義したり、アレンジだと思わせる工夫が必要。
例:D-Impact(Free Tap) / 有明、カーテンコール用ロング譜面 / ATM、行雲流水 / naotyu-(画像)、等

#ramdom命令

random命令⇒BMSファイルをテキストで開く
ランダムBMSはBMSEではサポートしていないので、直接テキストの記述を書き変えることになります。
BMSファイルのヘッダ、データ部分についての知識が必要になってきます。
関連項目⇒テキスト編集

◆定義の仕方

例えば3通りあるランダムBMSを作りたい場合、以下のものをデータ部分として定義します。


#random 3

#if 1
データ部分1
#endif


#if 2

データ部分2
#endif


#if 3

データ部分3
#endif

 

これを4通りにしたいなら#randomの数字#ifから#endifまで定義されている部分を1つずつ増やせば、
その通りのランダムBMSが作れる、という感じになります。

分かり辛ければ、実際にランダム定義がされているBMSをテキストで開いてみるのも良いかもしれません。
BMSの拡張定義について詳しく解説しているサイトはかなり少ないので、多くの人は実際にその定義がなされているBMSを開いてその定義を覚えたという作者の方も少なくはないと思います。

◆ランダムの方向性による補足

ランダムBMSを作る時は、データ部分は必ずしもifとendifの間に入れなければいけない訳ではありません。
例えば最後のキメの一音のみにランダム配置を使いたいときは、ランダムになる部分以外は通常通りのデータ部分として配置して、if部分にはランダムを使う小節やその部分のみを入れた方がかっこよくて経済的です。
(ある程度データ部分の一行一行が何を定義しているのかを理解する必要もありますが…)

低確率で違う種類の譜面を出したい場合、例えば20%の確率で隠し譜面を出したい場合、

#randomの数値を5にして、
if 1~5のうちの4つを同じ譜面のデータ、
1つを隠し譜面のデータにすることになります。
(2つのデータを用意して%(確率)で指定する事はできません)

またこの場合、あまり隠し譜面になる確率を低くしすぎない方がプレイヤーに優しいです。確かにcranky氏のLuvin' You "C&C mix"(現在入手不可)は20分の1の確率でPAL mix(曲変更)になるという話は有名ですが、これを普通のBMSでやってしまうとプレイする側が何度もプレイ⇒中止を繰り返したり、最悪の場合プレイヤーが途中で諦めてしまったり、殆どの人が気付かず話題にすら上がらない、という悲しい状況も考えられます…。

ランダム命令はifの他にナナシグルーヴ独自の命令としてelse、switchがあります。
これでピンと来た方はナナシグルーヴのヘルプにある資料を覗いてみるのもいいかもません。
このヘルプはBMS拡張定義のリファレンスとしても参考になります。

◆さいごに

ランダム命令は現在どのBMS作成ソフトにも対応しておりません。
BMSEの作者の方も今後対応させる予定はない、とどこかで聞いた気がします。(?

逆にどのBMS編集ソフトでもランダムBMSが手軽に作れるようになってしまうと、
おもしろ半分でランダムを使ったBMSが大量発生してしまい、考えものなのではと思ったり。

結局は何が言いたいかというと、『ランダムは隠し味。ここぞという食材に使いましょう!』

個性について

◆個性のない譜面

譜面にはある程度のパターンがあります。それらを守れば確かに形にはなりますが…
例えばこんなケース――。


7鍵化? まずは5key譜面を右にずらして、1鍵盤にバスドラムを追加だ。
シンバルは常にSC。BPMも一定で、最後は乱打やシンメトリーでOKさ!

 

…本当にOKでしょうか。
汎用的な配置のみで作られた譜面も決して悪くはありません。
個性に拘らず、プレーンに行くほうが良い例もあります。
ただ注意したいのは、BMSにとって譜面は曲と同じくらいの役割を持っていること。
曲を生かすも殺すも譜面次第です。無理してセオリーを破る必要はありませんが、
常に他の切り口がないか目を配らせてみては如何でしょう。

◆個性のある譜面

個性は一概に言えるものではありませんが、何となく感覚的なものはあります。
例えば…

・譜面を見ただけで曲が分かる譜面。
・叩き辛さが逆に面白い譜面。
・音階無視だが、見た目や叩き心地への拘りを感じる譜面。

…などなど。
一方、このような個性は伝わらなければ意味不明で終わってしまうこともあります。
個性を求める余り客観性を大きく欠いてしまっては本末転倒です。
実際に、ブームになった譜面は個性を出しすぎていないことが多いです。

私見ながら、個性を上手く出した譜面はsasakure.UK氏の作品です。
バランスの取れた配置は場数によるセンスの賜物でしょう。

◆ブームに乗った譜面

BMSの譜面では、本家IIDXで使われた斬新な配置……例えばThe Dirty of Loudnessの全押し冥(A)の高速32分階段がパロディーとして使われることがありますが、それはその時点で2番煎じ、3番煎じです。
使用の際は十分に考慮したうえでないと、パクりと言われても仕方ないかもしれません。

◆「本家でやっているから」は前を向いた後ろ向き

「本家でやっているからこの配置はOKだよね。」その考えは浅すぎます。本家でやっている、やっていないよりも、何故そうするのかを考えた上で配置するべきです。極端な例を出すと、5鍵隣接は現在のBMSではほとんど禁止する理由がありません。(主要本体ほとんどがセパレート表示)
プレイタイムについてもそうでしょう。1分30秒~2分強が本家の基準ですが、BMSではその限りではありません。
前例がある配置でも、一度立ち止まり、何故そうなるのかを考えてみるといいです。
何故1番にキックを置くのか――これだけにもその譜面なりの理由があります。
答えは一つだけではありません、答えが無いことが答えなのかもしれません・・・だけどっ・・・
オブジェ一つにも意味を持たせてみませんか?

◆結局は今の自分の譜面は今の自分にしか作れない

考えは変わるものです。個性のあるなしに捕らわれずに今の自分がいいと思ったものをどんどん作っていけばいいと思います。何作も作り続けていくうちに少しづつ自分の理想やスタイルは進化していくはずです。
そして自分なりの答えが見つかるでしょう。
スタッフのKzも昔はクソ譜面だーソフランだーとかやってたんですよ笑


続いてBMSEと地雷について紹介します